聞文読報

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8月3日 井上哲士(共産党)の質疑(抜粋) 参議院『平和安全特別委員会』 重要影響事態法における“武器と弾薬の区別”において、「手榴弾は消耗品であることから弾薬に分類される」と述べた中谷防衛大臣の答弁

※平成27年8月3日、参議院『平和安全特別委員会』より

井上哲士共産党

武器弾薬の補給についてお聞きいたします。

後方支援に関するこれまでの法律では、他国軍への補給について、武器弾薬の提供を含まないとしておりました。周辺事態法の審議の際に、当時の大森法制局長官は武器弾薬の提供について、「最終的にはそのような需要はないということでございましたので、詰めた検討を行うには至っていない。大いに憲法上の適否について、慎重に検討を要する問題であろうという感触はもっております」と答弁をされております。

今回の重要影響事態法案と国際平和支援法案ではこれを変えて、弾薬の提供は可能とし、武器の提供は引き続き不可と致しました。まず聞きますけども、この武器と弾薬の区別ってのは一体何なんでしょうか?

中谷防衛大臣

今回の平和安全法制によって重要影響事態法等において新たに提供可能となる弾薬。これは一般的に武器と共に用いられる火薬類を使用した消耗品であり、例えば拳銃弾や小銃弾などがこれにあたります。これに対して提供対象にならない武器とは、直接人を殺傷し、または武力闘争の手段として物を破壊することを目的とする機械、器具、装置であり、例えば拳銃、小銃、機関銃など、消耗品でないものを指すわけでございます。

井上哲士共産党

じゃ、武器と共に使わない手榴弾はどっちに入るんでしょうか?

中谷防衛大臣

榴弾につきましては、武器と共に用いられるものではありませんが、直接人を殺傷するなどの目的としている火薬類を使用した消耗品であり、弾薬として、重要影響事態法に基づいて提供することが可能であるということでございます。

井上哲士共産党

つまり手榴弾も提供が可能だということであります。引き続き武器の提供は出来ないと、ニーズが無いという説明でありますけども、この武器の提供についての憲法上の判断はされたんでしょうか。

中谷防衛大臣

今回の法整備におきまして、武器の提供につきましては、他国の部隊が必要とする武器は通常自ら携行するものと考えられたこと。また、ガイドラインの見直しにかかる日米間の協議の中でも、米側から武器についての支援のニーズは無かったことから踏まえまして、自衛隊が提供する物資の対象に、武器は含めないとしたわけでございます。

その上で申し上げれば、今般の法整備にあたりまして、武力の行使との一体化について改めて検討をした結果、補給、輸送などの支援活動については、提供する物資の種類に関わらず、現に戦闘行為を行っている現場において行うものでなければ、武力の行使と一体化するものではないと判断を致しておりまして、仮にこのような場合において武器の提供を行ったとしても、武力の行使と一体化するものではないと考えております。

井上哲士共産党

つまり武器の提供については憲法上の判断は可能だと行ったということですか?事前のレクでは行っていないというお話でありましたが、はっきりさせてください。

中谷防衛大臣

今回はニーズが無かったということで、物資の対象に武器は含めないということにしましたが、その上で改めて今回の法整備にあたりまして、武力の行使との一体化について検討をした結果、提供する物資の種類に関わらず、現に戦闘行為を行っている現場において行うものでなければ、武力の行使と一体化するものではないと判断を致しまして、武器の提供を行ったとしても、武力の行使と一体化をするものではないということでございます。

井上哲士共産党

大森法制局長官は、「憲法上の適否について慎重に検討を要する問題だ」と言われたわけでありますが、今の答弁を聞いておりますと、とにかくニーズがあったと。とにかく現場でなければよいと区分けをしただけでありまして、まともな検討がなされてるとは到底思えないわけです。

さらに武器弾薬の輸送について聞きます。

テロ特措法では、物品の輸送には外国の領域における武器弾薬の輸送は含まれないとし、イラク特措法では、実施要領において武器弾薬の輸送を行わないとしておりました。

今回の法制では陸上であれどこであれ、他国軍隊の武器弾薬の輸送が可能になるわけでありますが、先日の我が党の小池議員の質問に対して、武器弾薬の輸送について法律上、これは運んではならないという規定されたものがないという答弁でありましたが、そういうことでよろしいですね?

中谷防衛大臣

今回の重要影響事態法、また国際平和支援法におきましては、法律上、特定の物品の輸送を排除する規定はございません。ただし輸送の実施に際しては、いつ、どこへ、どのような物品を輸送するかなど、支援対象国からの具体的な要請内容に基づいて、活動地帯の情勢、自衛隊の部隊の運用状況等を踏まえて、輸送を安全に行うことができるかについて評価し、個々の輸送の都度、自衛隊として主体的に実施の可否を判断をするということになります。

井上哲士共産党

武器弾薬の中身についての排除するものはないということなんですね?

そうしますと非人道的な兵器だと禁止が求められてきた、クラスター爆弾であるとか劣化ウラン弾も、法律上は輸送が排除されないということになるわけですね?

クラスター爆弾については、不発弾、特に不発弾によって多くの一般市民が紛争終了後も死傷者を出す非人道的兵器だということで、国際的な禁止の世論が広がって、クラスター爆弾禁止条約、日本も批准をして、2010年8月1日に発効致しました。

劣化ウラン弾については、1991年の湾岸戦争で初めて使用されて、破壊力が大きいために世界各地の紛争で使われてきました。使用されると微粒子になって周囲に飛散して、これが体内に取り込まれて、内部被爆とか科学的毒性による健康被害を引き起こしたとして、住民であるとか、そして帰還兵からも訴えが続けられております。

外務大臣にお聞きしますけども、このクラスター爆弾劣化ウラン弾について、米国はどういう政策をもって、そして保有と使用の状況はどうなってるでしょうか。

岸田外務大臣

劣化ウラン弾につきましては、まず米国の保有状況につきましては公表されておりません。よって我が国として詳細は把握しておりません。そして使用状況につきましても、詳細については承知しておりませんが、例えば2001年に米国防省が公表した資料によれば、米国は1994年から1995年のボスニア・ヘルツェゴビナにおける紛争。あるいは1999年のコソボにおける紛争において使用したと承知しております。

そしてどんな政策をもってるかというご質問でございますが、それにつきましては劣化ウラン弾国連総会においてはその使用がもたらす環境及び健康に対する影響をさらに調査すべきとする決議案が提出されておりますが、米国は多数の国際機関による調査にも関わらず、明白な証拠が無い中で劣化ウラン弾の環境及び健康に対する影響があることを前提とすべきではない、こうした立場をとっております。

クラスターの方につきましても、まず米国は保有状況を公表しておりません。よって詳細は把握しておりません。そして使用状況につきましても詳細は把握しておりませんが、米国関係者の様々な文書。例えば米国議会調査局報告書によれば、米国は2001年から2002年にアフガニスタンで、2003年にはイラクにおいて、英国とともにこのクラスター弾を使用しております。ただ2003年以降は使用していないということであります。

そしてこのクラスター弾に対する姿勢でありますが、米国はクラスター弾の無差別の使用による影響について懸念を有する一方で、その軍事的有用性を認識している。このような基本的な立場にあると承知しております。

井上哲士共産党

つまりクラスター爆弾劣化ウラン弾についても米国は、この世界の非人道的兵器はやめようという声には同意をしていないわけでありまして、クラスター爆弾禁止条約にも入っておりません。

過去、2008年の当時の法制局長の答弁で、この劣化ウラン弾について、「一部の在日米軍の施設、区域に保管されているものと承知しております」と、こういう答弁があります。そしてこの日本がクラスター爆弾の禁止条約に参加していく過程の中で、これはウィキリークスが暴露したわけでありますけれども、アメリカ政府は、日本側から在日米軍クラスター弾の撤去を求められることに懸念を伝えていたということがあるわけですから、いずれも在日米軍の施設に保管がされているものであります。

そうなりますと在日米軍も持ってるし、アメリカはいずれも使用をやめると言っておりません。現に保有をしております。アメリカから依頼されれば、この非人道兵器、クラスター爆弾劣化ウラン弾も日本は輸送するということは、法的に排除されないんじゃないでしょうか。

中谷防衛大臣

後方支援をするにあたりまして、安全が確保されていることは大前提になるために、輸送の実施にあたって物品がどのようなものであるのか、これは重要となります。

劣化ウラン弾につきましては、人の健康等に対する影響に関して、国際機関による調査が行われてきておりますが、現時点で国際的に確定的な結論は導かれていないと認識を致しております。我が国としては保有をしたことのない弾薬でありますので、劣化ウラン弾の輸送の安全性について承知していないために、現時点において他国の劣化ウラン弾自衛隊が輸送することができるかどうか、これは確定的に申し上げることができません。

クラスター弾につきましては、法律上排除はしておりませんが、クラスター条約締結国であるという我が国の立場も踏まえまして、事態に応じて慎重に判断をしていくことになると考えております。

このクラスター弾に関する条約におきまして我が国は締結をしておりますけれども、同条約が規定する以上にあたらない形であれば、クラスター弾の輸送を行うことは条約上は否定をしておりませんが、いずれにしましてもこれらの弾薬を輸送することは念頭において今般の法整備を行うわけではないと。

最初に申し上げましたとおり、後方支援を行うにあたりましては安全が確保されているということが大前提で、そのような物品がどのようなものかにつきましては、非常に重要なものであると認識いたしております。

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発言者:中谷防衛大臣、岸田外務大臣井上哲士共産党