聞文読報

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8月19日 二階俊博 自民党総務会長 記者会見 質疑応答(全文) 『日本外国特派員協会』

※2015年8月19日、『日本外国特派員協会』より

まず先週、天津で発生しました火災、大爆発事故に関しまして、心からお見舞いを申し上げるとともに、哀悼の気持ちを表したいと思います。一刻も早く問題の解決に、中国はもちろん、また交流の深い関係各国も協力して、成果をあげることを期待しているものであります。

さて、日中関係でありますが、わたくしは日中の観光文化交流ということに常に焦点をおいて、政治が難しい情況に差し掛かっている時も、また円満な進展をみている時も、常に日中の観光文化交流というものを中心に据えて、地方も中央も共に努力をしていきたいと考えております。

日中間の観光交流や地方交流、特に青少年の交流、防災分野における協力等、今日までわたくし自身も取り組んでまいりましたが、今後ともこの方面での展開、発展を期待しているものであります。

こうした考えのもとに、わたくしは本年の5月に、日中友好を願う3,000人の人々と共に中国各地を訪問しました。3,000人の方々は、ひとりひとりが自らの意思でご参加いただいたものであり、ここに訪中団のそれぞれの皆さんの決意と、民間大使としての意義と資格があると考えております。

日中友好交流の夕べ』、北京の人民大会堂で開催いたしましたが、日中関係を重視する旨の前向きのメッセージが習近平主席からも寄せられ、たいへん盛りあがった交流会となりました。

わたくしはこの大型の規模の訪中団というのは5回目でありまして、第1回目は5,200人の規模で 「日中文化観光使節団」と称して、ちょうど2000年の年に行われました。次には13,000人の皆さんと共に、ちょうど国交正常化30周年記念事業として、2002年でありますが、これを実行いたしました。

観光交流は、この一方通行のようなかたちでの交流ではなくて、双方向の交流が必要であります。日中双方向30,000人の交流計画を、2007年に実行いたしました。

また、2012年には『弘法大師空海を偲ぶ』というテーマで、「日中交流使節団2012年」を実行いたしました。先ほど申し上げました3,000人からなる日中観光文化交流、それぞれ中国側におきましても多大な協力を得て、観光分野を通じた日中交流を推進してまいりました。

先般は、特に習近平主席からは非常に示唆に富んだたくさんの中国の古い諺や、あるいはまた人びとに通じている、日本人なら誰でも知ってるというふうな言葉がたくさん述べられました。今でも印象に残るふたつの言葉を述べられましたが、冒頭「友あり遠方より来る また楽しからずや」、ここから主席のスピーチは始まりました。最後の言葉には「さきの人が木を植えるならば、のちの人がこれに涼むことができる」と、こういう意味の深い言葉でありました。

ちょうど13,000人の人たちと一緒に訪中した2002年でありますが、ちょうどその時わたくしたちは13,000本の木を、あの万里の長城のそばの八達嶺というところへ植林をさせていただきました。わたくしはその際、日本からの、またのちのちの人たちもこの八達嶺を訪ねた時に「あぁ、うちのお父さんが植えたんだな、お母さんが植えたんだな」ということがわかるように、みんなの植えた人のサインをプレートに刻んで、永遠にそれが保存できるようにしてあります。13,000人です。

ですから、わたしたちが植えた針金のような細い木は、もう10年経ってずいぶん立派な木に育っております。

習近平主席が述べられたとおり、これからもこの13,000本の木は、日中の交流のひとつのエピソードとして語り継がれていくだろうと思っております。

最近、中国からの訪日の中国人が大幅に増えておりますが、一方、日本から中国への訪問者はピークであった時に397万、これは2007年でありますが、それから2014年の統計では272万にまで減少しております。

平和で関係を維持発展させていくためにも、経済の交流を盛んにしていくためにも、交流は双方向でお互いに発展していくということが重要でありますが、今その点においては中国から日本においでになる人たちの数に比べて、日本から中国を訪問する人の数は相当減少しておるわけでありますが、これについて我々もここから対応を考えていかなきゃいけないと思っております。

わたくしは地方の旅行業者を中心として5800の会社が集まっております全国旅行業協会の会長を20年続けてやっております。

今日のこの情況について、なんとか日本側も努力をして打開の方向を考えていかなきゃならんというふうに思ってます。

災害の分野で、わたくしは四川の大震災が発生した時、国会議員20数名と共に支援物資をチャーター機に詰め込んで1日で日中間を往復し、またその時は、出発に際しても駐日の中国大使にお見送りをいただき、また帰ってきた時も空港にまた駐日大使が出迎えてくれておるというような状況で、何を言わんとするかというのは、それほど仲の良かったといいますか、お互いに交流が盛んであった時代もあったわけでありますから、我々はこのことを忘れないでしっかり交流を続けていくことが大事だと思ってます。

東日本の大震災の直後でありますが、当時の温家宝総理は日本から被災地の子供たち500人を海南島に招待してくれました。

仙台の空港に集まった子供たちはうつむきかげんで、本当にうちひしがれておるというような状況でありましたが、海南島に到着するや人々のあたたかいおもてなしをいただいて、見違えるような元気な子供になったことを、わたくしは印象深く覚えております。

その当時の子供たちが、時々手紙を寄こしてくれることがあります。あれから4年、もう5年になるわけでありますが、当時の小学校の上級生は中学を越えて高等学校へ進んでおるわけでありますが、そういう手紙が、時々一緒に中国を訪問したわたくしにも手紙を寄こしてくれることがあります。

先般、わたくしは中国で思い出したことは、中国の人たちがそうして日本の子供たちを招待してくれた、それにただ感謝をしてるだけではなくて、我々もまた中国の子供たちをこの際、招待してはどうかと、4人の知事が一緒におりましたから、知事や同行した国会議員の協力を得て、500名を日本に招待することにして、この11月のはじめ、日本に500名の子供たちを招待することにしました。

中国訪問ののちにわたくしは安倍総理にお会いをして、その子供たちが日本に訪問して来られた時、もし総理の日程が合えば、総理官邸やあるいは総理自身がこの子供たちと一緒に写真を撮るとか、いろんなことで総理が歓迎の意を表してくれれば、中国側にもそのことは、思いは伝わるだろうということを申し上げました。

安倍総理はこのことに対して、自分としてはできるだけのことをしてお迎えをしたいということを真剣におっしゃっておられたことからして、わたくしは先般中国を訪問してそののち、安倍総理はこの日中問題にどういう受けとめ方をしておるかということを多くの人から質問を受けましたが、これは中国の子供たちが日本に来られたら総理自身が応対すると、歓迎するということを言っておることからして、これがすべてを物語っているではないかということを、わたくしは申し上げております。

次に国土強靭化と〔世界津波の日〕についてひとこと申し上げます。

わたくしは現在も自民党の国土強靭化総合調査会長を務めております。

東日本大震災の教訓を踏まえて、災害に強い国土作り、防災、減災のための社会資本整備を進めるべく、法律も4本の法律を作って、今、さらにこの推進に努めているところであります。

津波防災にちなんで、11月5日を日本津波防災の日と法律で定めました。

今日この機会にお集まりの有力な皆さまにご協力をお願いしたいわけでありますが、今わたくしは、先般、国連が後押しをしてくれて〔世界防災記念のシンポジウム〕を仙台で開いたことはご承知の方もいらっしゃると思います。

その際、その日本の11月5日津波の日を、多くの各国の有力者の皆さんのご協力やご理解を得て、11月5日を〔世界津波の日〕にして、すべての人類が地球的規模で、この自然災害に立ち向かっていくということが大事ではないかという提案をいたしております。

先般、中国の訪中の際にもこのことを中国側に働きかけ、積極的な賛同を得たところであります。

わたくしはこのことに対して、この世界各国の賛同を得るべくあらゆる努力をいたしておりますが、日本に大使館を置かれている国々に対しましても積極的に国会議員を差し向けて各国大使の同意を得る、また協力を得るという作業をいたしておりますが、今では約100ヶ国に近い国々の賛同を得るにいたりました。

最後に日中文化交流についてひと言申し上げます。

本年10月に北京でNHK交響楽団の演奏会を開催することにし、先般、北京訪問の際に、国家大劇院を使わせていただいて大演奏会を開催するということに、中国側の協力が得られることになりました。

今年の春でありますが韓国におきまして、このNHKの演奏会を開催しましたところ、韓国の新聞には日韓間の壁が取れたような感じがしたということを、いつも日本の悪口を一生懸命書いてるような新聞も、この日ばかりはずいぶん称賛してくれたことを記憶しておりますが、今度は北京で、この国家大劇院で、日中友好の音楽を奏でることを楽しみにしております。

わたくしは今後とも日中関係を支えていくのは、やはり民間交流が中心であるべきであると思っております。引き続き全力を尽くして、この方面で努力をし、日中関係の新時代を築いていきたい、こういう信念でありますことを申し上げて、わたくしの方からのスピーチを終わらせていただきます。

ありがとうございました。

自民党総務会長 二階俊博


フランスの放送局

いろんな素晴らしい友好関係を築きたい、あるいは促進したいというお話は出たんでございますが、今回、中国に訪問されまして、次に安倍首相が中国に行けるような、訪問できるような、その道筋っていうのはできましたのでしょうか?

もしそうであればどのような訪中を期待されますのでしょうか?

二階俊博

ありがとうございました。

まず、先般のわたくしどもの訪問、またその後の日本政府の努力もあって、今だんだんと日中関係は打ち解けてきております。

その中でやはり、今ご質問にもありましたように、日中関係を進めていく上においては、政府間どうしの首脳会談というものが早く開けるかどうかということに焦点が集まってきておると思います。

そのことについては日中双方の指導者たちも充分心得ておられるはずであります。わたくしはそう遠くない将来に日中の首脳会談が立派に開ける、開催できることを期待しておりますし、わたくしはそれを実現できると確信をしております。

クラーク(フリーランス

今までその文化交流に非常にご努力されてましたことをお話を伺いまして、たいへん興味深く聞いておりました。

しかしながらこういう素晴らしい交流のご努力があったとしましても、領土問題、あるいはそのほかの政治問題が残るかぎり、なかなかそういう交流は結果を出すのが難しいのではないかと思います。

質問でございますけど、1972年に田中総理が中国を訪問されました時、1978年にその尖閣問題を棚上げするというようなお話があった、合意があったということになってるんでございますけど、日本政府はそのような合意とかそのような理解、そういうような話があったってことを否定してるわけでございます。

先生はこの件についてはどう思われますでしょうか?

二階俊博

わたくしは若い頃、田中派国会議員でございましたから、田中さんのそうした言動については記憶するところでありますが、この棚上げ問題っていうのは歴史的にも、あるいはまた練達の政治家の知恵として、わたしはこれはたいへん素晴らしい考え方であると、今直ちにに解決しようということを急いでも、なかなか解決を直ちにというわけにはまいりません。ならば少し頭を冷やす時間があってもいいんではないかと。

わたくしはこれは、この考えには賛成であります。したがって、日本の国会議員の中にもこのことを賛成する人は多くおります。

したがって、我々もこれからの努力目標のひとつであろうと思っております。

クラーク(フリーランス

質問でございますが、1972年、あるいは78年にこの尖閣問題を棚上げする合意があったかどうか、事実としてそういう話があって、そういう合意ができたかどうかっていうことでございます。

多くの方たちはそういう合意があったと考えているようでございますが、少なくとも今の政権、今の日本の政府の態度はそのような話、合意はなかったという態度をとっているそうでございますが、ということは今までのその合意があったという考えについて、日本政府は考え方を変えたんでしょうか?それとも変えていないんでしょうか?

この状況をどうお感じになっていますでしょうか?そして実際にそのような合意、アグリーメントっていうのは、棚上げするっていう合意があったのでございますでしょうか?

二階俊博

(舌打ち)

棚上げの問題は誰でもご理解いただけるとおり、ひとつの問題を解決する、衝突したような状態になってるのを打開していくためには、棚上げはひとつの我々の先輩たちの積み重ねの議論によって、なかなかいい知恵だと思いますが、今別にこれを棚上げすることに決めたとか、棚上げしておるとかということを言うわけではありませんが、棚上げについては当然ひとつの考え方として、有力な当面、解決に近づけていくのに大事なことだというふうにわたくしは思っております。

レイノルズ(ブルームバーグ

70周年の談話について伺いたいんでございます。

数ヶ月前、このようなご発言があったかと思うんでございます。「総理が出すその談話によって日中関係は改善するだろう」と、そういう期待を述べてらしたのでございますが、その期待はそのとおりになったのでございましょうか?

ふたつ目の質問でございますが、この談話は自民党にどのような影響を与えるとお考えでございましょうか?

この談話が出されたことによって、党はより統一されるものになったと思いますでしょうか?なると思いますでしょうか?

つまり、これからの総裁選が無投票総裁選になると思いますでしょうか?

二階俊博

ありがとうございました。

その70年談話というのが、もう必要以上に世界中から注目を浴びて、70年談話がなければですね、日本国は前へ進めないみたいに各方面から言われて注目を浴びたんですが、ご案内のように70年談話は、一応、総理として、あるいは日本国として、世界に向かって発した平和を願う日本、戦争を二度と起こしてはならないという日本、この考え方は、メッセージは伝えられたんではないかというふうに思ってます。

そこで自民党は、あの談話でだいたい、了解といいますか、賛成だという声が圧倒的に多い、こういう状況です。

国民の皆さんからの反応もたいへんこの安倍総理の発言は、発言といいますか談話は、結構であったという評価が多いと思います。

むしろ一部マスコミでは、これでもかこれでもかっていって、いつものような調子で言われる人もおりますが、そういうマスコミに対しては、かえって国民の側からそれはあまり言いすぎではないかと、褒める時は褒めた方がいいという声が巷に行き渡っておるということも、我々理解しております。

70年談話が安倍総裁の再選になんらかの影響があるかっていうと、これはもうまったく別問題でありまして、我々日本国民として等しく、あの戦争は世界の人々にお詫びを申し上げるっていうのは当然のことでありますが、日本はお詫びを申し上げているだけで、世界の中の日本としての役割を果たすことができるかっていうと、それだけでは誰もが満足しない。わたくしはむしろこれを、70年を機会に、日本がさらに生まれ変わり、さらに高い立場に立って、世界の皆さんに日本がよくがんばっとるという評価を得られるように、一層の努力をする。

自由民主党は安倍再選に向かって今静かに、その方向に進んでいると、わたくしの経験からしますと安倍総理再選は間違いないと、こういう状況だというふうに判断をしております。

リー(香港フェニックステレビ)

先ほど四川の地震の話がありましたけれども、当時中国にたいへん支援をした、わたしも同行取材をしましたけれども、たいへん感銘を受けました。ありがとうございます。

今日わたしがお聞きしたいのが、先ほどの安倍総理の談話と関係がありますが、この安倍談話の発表によって中国や韓国との歴史問題がこれで一段落したとお考えでしょうか?

そしてこの靖国のことも含めて、今後この歴史のことについて、どのように日本が中国と向き合うべきなのかということを、二階先生の考えをお聞かせください。

二階俊博

まず四川の地震の際はこちらこそたいへんお世話になりました。

安倍総理が今度の、つまり、この間からたいへん問題になっておりました談話の件でありますが、あの談話ですべてこれが、こういう問題に対しては解決したとか、あるいは解決するという話ではなくて、日本は今後ともこの歴史問題や、あるいはこの談話に示された日本の決意、これを今度は実行していく責任を担うわけでありますから、このことをこれから日本もがんばっていきますから、世界の各国のみなさんはこれをあたたかく見守っていただきたい。

我々は世界の皆さんと共に歩む日本であり、日本も世界各国の発展に大いに貢献したいという気持ちを持っておりますし、また、やろうと思ったらやれるだけの能力も、これまたおかげさまで世界各国の協力のおかげで日本もそういうことの力を持つにいたってるわけですから、大いに日本がこれからの努力をすべきで、すべてはわたくしはこれからにあると。

したがって今のご質問の意味をよく達して我々もこれからの国政の場において、世界に発した日本の決意を実行していく努力を、自民党としても、あるいは国会としても、大切にこの決意を守っていきたい、実行していきたいとこのように思っております。


靖国神社について)

日本としては、この歴史的にも過去を振り返って靖国の神社に祀られてる人たちに対して、我々国民として常にこの人たちに対して尊敬の念をもって接することは当然でありますが、一方このことによって諸外国との間で軋轢が生ずる場面がしばしばあるわけですね。

これについては日本としては、この問題に対しての解決策を考えていかなきゃならんと。

ですから合祀の問題が常に言われるわけですが、このことについても今後あまり時間をかけないで解決の方法を見出すべきだということを、靖国の問題が諸外国との間で議論をされるたびに日本はそのことを思い起こすわけですが、これは日本としても考えて解決策を見出したいというふうに思っておりますから、ある程度時間を与えていただいて、見守っていただきたいというふうに思います。

発言者:二階俊博