櫻井 水曜日です。独立総合研究所、青山繁晴さんの登場です。青山さんおはようございます。
青山 おはようございます。
櫻井 けさは靖国神社についてですね?
青山 はい。先日の敗戦の日、8月15日に靖国に参拝した方々は靖国神社に聞いたところによれば19万を大きく越えたそうです、20万人に迫る勢いですね。
櫻井 ほう。
青山 若い人の参拝もたいへん増えまして、関心が強まっていることは事実です。
櫻井 はい。
青山 ただその上で、今年から宮司、宮司っていうのは神社で一番トップの人ですが、宮司の徳川さんっていう方、徳川将軍の直径の末裔なんですが、この徳川宮司の英断で出店、そういうものをすべてやめてるんですね。
櫻井 ああ、そうですか。
青山 はい。敗戦の日じゃなくて、〔みたままつり〕っていうのが7月にありまして、その時からもうすべてそういう措置をとってます。これはどうしてかというと、靖国神社を理解しないままナンパの場所にしているような中高生が増えたということで、もう一度静かな環境に戻すために宮司が決断されたことですね。
櫻井 はい。
青山 今の話をなぜしたかといいますと、たとえばもう8年前になるんですが、2007年に中国人の監督で『YASUKUNI』という映画が作られまして、その映画、たとえば8月15日に右翼団体の人がたいへん派手な様子で参拝されたり、そういうことを集中的に靖国の姿として捉えた映画がたいへん話題、あるいは問題にもなったわけですね。
櫻井 はい。
青山 これ事実上、日本政府の助成金も入った、一部です、750万円ですけども、それだけで映画を作れるわけじゃありませんが、日本政府が助成して作られた映画だっただけにたいへん論議を呼んだんですね。
櫻井 はい。
青山 この映画監督の中国人の方とこの敗戦の日、8月15日当日の未明まで今年、ニコニコ生放送で僕は生で議論をしてきました。
櫻井 はい。
青山 その議論をした際に、この中国人の映画監督の意欲は僕も買ってます。それから反日映画と決めつけるのも間違ってると思います。
櫻井 ええ。
青山 靖国神社をまっすぐ捉えようと努力はされたと思うんですが、ところがいきなり映画の冒頭から、ご神体を間違えてるわけです。
櫻井 ああ、そうなんですか。
青山 靖国神社の御神体っていうのは〔剣〕と〔鏡〕なんですけれども、それを特定の刀だけが神体だと間違えてらして、もう放送の最初から激論になってしまったんですが。
櫻井 ええ。
青山 これはほんとは議論をすることじゃなくて、ご神体は決まったものしかありませんから、でも中国人の映画監督の方は外国で賞も獲られてるから、プライドもあると思うんです。それをなかなか認めない。
櫻井 ほう。
青山 それから、たとえばもう世界的には、南京の問題について捏造写真だと、つまり日本軍がおこなった行為じゃないのに、日本軍がたとえば首を切り落としたというような間違った写真がそのまま使われたりしているわけですね。
櫻井 ほうほう。
青山 これはその中国人の作った映画は映画として、わたしたち日本人も、靖国神社についてそろそろ正確な勉強をすべきじゃないかと思うんですよね。先ほどのナンパの場所になったりすることも含めてちゃんと教育やメディアで、靖国神社っていうのは右とか左とかじゃなくて、客観的に見たらどういう所なのかということを知るべき時期がきてると思います。
櫻井 ふーむ、そうですねぇ。
青山 その上で今日後半にお話したいのは、僕自身がこの靖国神社の、先ほど申しました宮司さんをはじめ神官、いわゆる神主さんです、そういう方々と長年議論してきてるんですね。
櫻井 ええ。
青山 たとえば、これは僕の個人的な意見で靖国に申してることなんですが、靖国神社にお祀りされてる人、つまり英霊の方々はいわゆる官軍だけなんですよね。
櫻井 はい。
青山 祖国のために、つまり自分の利益のためじゃなくてみんなのために、祖国のために命を落とした人は靖国に祀られる、幕末以降の人はそうであるということになってるんですけれども、実際はたとえば皆さんご承知の上野の〔彰義隊〕であったり、あるいは会津の少年たち〔白虎隊〕であったり、そういう方々は賊軍として祀られてないわけですよ。
櫻井 はい。
青山 そうやって分けてしまっていて、そうするとたとえば海外に対して、どういう方であっても亡くなればそれまでのことを乗り越えて、たとえば僕が祖国のために死ねば、青山繁晴の尊というふうに皆同じ祭神になるという考え方だというふうに説明してるから、A級戦犯の合祀も問題はないんだと靖国は主張されてるし、僕はそれはそのとおりだと思うんですけど。
櫻井 ええ。
青山 それだったら国内で賊軍と官軍と分けていいのかってことになると思うんですね。
櫻井 ですねぇ。
青山 靖国神社もこれに取り組まれていて、昭和40年になってから鎮霊社というものを、その本来の拝殿や本殿の向かって左側にちっちゃく作られているんですけれども、しかしこれは充分といえないと思うんですよね。
櫻井 ええ。
青山 そういうことに加えて、たとえば日本には国立の戦争記念館ってのが無いんです。これは世界のどこの国でも負けた戦争であれ勝った戦争であれ関係なく、国営の戦争記念館があって、そこで若い人から、その戦争を経験された方々まで、良いことも悪いことも学べるということがほとんどすべての、特に主要国ではそうですね。それが日本には無くて、唯一この靖国神社の遊就館っていう場所がそれに近いものなんですが。
櫻井 ほう。
青山 実は靖国神社っていうのはご承知のとおり敗戦後、国の施設じゃなくなって、いちプライベートな私〔わたくし〕の施設になってるわけですね。
櫻井 はい。
青山 そうするとこの遊就館の中身について、わたしたちが意見を言うことができても、国の施設じゃないから、そのつまりわたしたちの税金で運営されてないから、これ変えてくださいってことが本来言えないわけですよ。
櫻井 そうですね。
青山 遊就館は非常に丁寧に、公平に展示してあるんですけれども、しかしわたしが靖国神社に長年問題提起してるのは、なぜ戦争になったかっていう展示はたくさんあると。これはなぜかというと遊就館だけじゃなくて、わたしたちは敗戦後70年間ほとんどその話ばっかりしてきたわけですね。侵略であるのかないのかも含めて。
櫻井 はぁい、ふーむ。
青山 ところが、一番大事なことのひとつは〔なぜ敗けたのか〕ということをきちんと分析しないと、実はたとえば海軍の兵学校を優秀な成績で卒業したら、その成績のまま将軍になってしまうから実践に疎い人が偉くなったりしたこともあったわけですね。
櫻井 ほうほうほう。
青山 そういう理由、今も残ってますよね?
櫻井 はい。
青山 東大法学部で優秀だったら、財務省の事務次官になるってことになってしまってますね?
櫻井 そうですね、ええ。
青山 ですから、敗けた理由をちゃんと分析できる施設が必要であって、そのためには靖国神社を国営にすべきだと僕は考えてます。靖国神社を国で運営しましょうって言ったらすぐ右翼とかいう話になるんですが、そんな話じゃまったくなくて、国際社会の常識に合わせるということだと思います。
櫻井 はい。
青山 僕が申したことも含めて、どうぞ靖国神社に皆さん、8月15日がほんとは靖国神社の中心じゃなくて、普段の靖国とあるいは春と秋の例大祭こそが一番大事な時期なんですね。
櫻井 ほう。
青山 最後に申しますと、A級戦犯が合祀されてるから天皇陛下がご参拝になれないって話がありますが、それは実は違います。政治的な争いごとになってる場所には陛下はいらっしゃれないということであって、その証拠に勅使は春と秋にずっと天皇陛下のかわりに靖国に来られてるわけです。そういうことですから、8月15日だけじゃなくて普段の靖国をみんな見ながら、これからの靖国神社、すなわちわたしたちのあの戦争の総括の仕方をみんなで考える時期がもうきたと思ってます。
櫻井 あ~、そうですねぇ!ありがとうございましたぁ。
青山 ありがとうございました。
櫻井 独立総合研究所、青山繁晴さんでした。